妹の友達

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 七瀬が連絡手段を持っていなかったという予想外の事態があったものの、約束を忘れていた真奈美が全部悪いわけで……。 そんな馬鹿妹の兄としては、とるべき態度は一つしかない。 「うちの馬鹿が申し訳ない」 「お、お兄さん!?」 「あいつには明日アスファルトの上に土下座で謝らせるから」 「なにそれ痛そう! というか、そんな頭下げないで下さい!」  頭を下げる俺に、慌てて両手突き出してやめさせようとする七瀬。 頭を下げる俺を、座っている七瀬が見上げているという奇妙な光景だった。 俺としては誠意を見せるべきだと思ったが、しかし、七瀬が止める以上はやめるしかない。 謝って困らせるなんて本末転倒だ。 しかし、それでは俺の気が済まない。 いや、俺の気が済まないっていうのは、要は俺の我が儘なのかもしれないが、このまま許してもらうのは申し訳ない。 どうするべきか……。 「じゃあ、もう時間も遅いし、家の近くまで送っていこうか?」 「えっ? でもお兄さんの家って反対方向の路線ですよね?」 「まぁ、そうだけど……」 「ダメですよぉ! 次が終電なんですから!」 「別に構わないよ。元々今日は終電に間に合う予定じゃなかったから、親に迎えに来てもらえるし」  これは咄嗟に出た嘘だ。 終電に乗る羽目になること自体が予想外だったのだが、まぁ、迎えには来てもらえるだろう。 なんだかんだ文句を言われるだろうが、その分を真奈美にぶつけてやればいい。 こちらの勝手な我が儘なのだから、あまり遠慮して欲しくないというのが本音だった。 もちろん、こんな時間に年頃の女子に一人で帰らせるのが忍びないのも本音だが。 しかし、七瀬は首を横に振った。 「気持ちは嬉しいですけど、やっぱりダメです!」 「ダメかな……」 「嫌というわけではないですけど、そこまで世話をかけるわけにはいきません」 「それなら仕方ないか」 「それにほら、私は襲われるほど可愛くもないですし?」  冗談めかしてヘラヘラと笑う七瀬だったが、しかし、その発言には異を唱えたい。 少し色の薄いショートカットに、白く滑らかな肌。 人懐こそうなたれ目に、ほのかに上気した頬。 そしてぷっくりと小さく膨らんだ桃色の唇。 柔らかい雰囲気と純粋そうな瞳。 朗らかで優しい笑顔。 誰が見ても、彼女を可愛い女の子だと言うだろう。 もちろん、こんなこと口に出せるはずもないが……。
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