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潰れた蟻の死骸を見て思い出すのは、幼い頃のぼく自身だった。
他愛もないことで笑っていられる無垢な時間はあっという間に過ぎ去り、何時しかぼくは手垢に塗れた汚物をしっかと握り締めるのに必死な、ちっぽけな道化にすぎなくなっていた。
彼らは何を目的として生きているのだろう。えっちらおっちらと虫の死体をバラして自宅へ持ち帰る力仕事。1LDKどころではない、簡素で素敵な住まい。
幼い頃、ぼくは蟻の行列を邪魔するのが楽しかった。今となっては何が楽しいのか理解できないが、ぼくが運んだ小さな石ころの下敷きになって死んでいった働きアリは、もしかすると紛れも無いぼく自身だったのかもしれない。
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