いし

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ヒトの頭蓋骨が落ちていました。 その真っ暗な眼窩は真っすぐにぼくを見つめ、綺麗に揃った歯が印象的でした。 まわりを見ても、何の変哲もないいつも通りの町並みなのにぽつりと、ここには頭蓋骨。腕や足、胴体と思えるようなものは何一つありません。湿った感じはしないので、ある意味それは当然でした。 ほかの人はどんどん歩いていくのに、ぼくだけは頭蓋骨と穴があくほど見つめ合っています。ヒトの骨なんてそう見られるものではないのに、誰も騒がないのは何故なのでしょうか。道路に石ころが転がっていても誰も見向きはしない、そんな感じです。 誰かに聞いてみたかったのですが、道端の石ころがいつから転がっていたか把握している人などいるわけがないと思ったのです。
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