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そう、あれは…ほんの先週のことだ。築8年、大学時代から住んでいる安アパートから出勤するために、俺は家を出た。ら、ヤツがいた。
黒スーツにピンク地に白い水玉のネクタイ、人をおちょくった様なニヤケ顔に顎髭を尖らせている。アンテナの様に立っているアホ毛が初夏の風にひよひよ揺れていて、パッと見お洒落なんだかそうじゃないんだかよく分からない。というかよく見ても分からない。とにかく、そいつが俺に言ったんだ。
「────母親を買いませんか?」
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