ゼロの人間達

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彼らの入れ替え戦はグランドを使用する練習時間を少なくさせる。無駄な時間を使うなよ、他の選手、全員一致の意見だった。     ユニホームからジャージに着替える。そそくさと家に帰り、ただいまも言わず部屋に入る。後ろから見てもずんぐりむっくりな身体を丸め、体育座りで部屋の隅を見つめる。 「悔しい!」 そう思うと自然と涙が流れる。こんな筈ではなかった。高校に入ってサッカーをするバラ色の生活が待っているはずだった。どうにもできない現実とぶつかり、解決方法も思いつかない。憧れや夢だけでレギュラーは掴めない。 涙が止まると、少年は外に出た。ボールを持ち近所の公民館に向かう。壁にぶつけて跳ね返ってきたボールを蹴り返す。蹴りながら、また涙が流れてくる。ボールを蹴り終わると、気の済むまでランニングをする。そうしないと気持ちがバラバラになりそうだった。
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