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「アァッーーーーーーーー!!!」
既に隣では彼女がいて、僕と同じように叫んでいた。
咆哮だ。
「ふっざけんなーーーーーー!!!」
「運動おんちで何が悪いーーーーー!!!」
二人して思い思いのことを叫びまくった。
あまりに叫びすぎて二人共に喉が渇れてしまった。
「買ってきて」
彼女が小銭を手渡した。
僕は急いで自販機に向かう。
先に泣かれては困る。
僕が彼女を慰めないといけないからだ。
案の定戻ってみると、彼女は顔も見ずに「早すぎる」と言ってジュースを受け取った。
僕は決意が固まったが、彼女にだって準備が必要なのだ。
「帰る」
彼女がそう言って、僕はいそいそと自転車を用意した。
彼女はここまで歩いて来ていたらしい。
二人乗りをすると、背中に感じる彼女から衝撃を受けた。
それは拳ではなく、額の感触。
彼女は髪が長い。
自転車で後ろに乗るから支障はないが、もっと切れば僕好みになる。
もっと無差別な暴力も減らしてほしい。
無差別な要求もだ。
そうすれば、僕は彼女もっともっと好感を持てる。
でも、きっとそれを無くしてしまえば、彼女は彼女で無くなる。
それを知った。
彼女は素直だ。
約束は律儀に守る。僕が唯一彼女の長所としてしてあげるならそこだろう。
「───あのさ、前の画像を消すって言ってたじゃん」
僕はそれに答えない。
「───あれ、嘘でさ、本当は消してないんだ」
へぇー。
「───だから、あんたはまだ私の奴隷なんだよね」
そうですか。
「だから─────おら!速く漕げよ!」
彼女は僕を叩く。
痛い。
ただそれだけ。
「───ありがと、ね」
あぁ、どうでもいい。
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