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幼少から病気がちだったのは以前から聞いてはいました。ただそれが、心臓からくるものだとは知らずに一緒にいたのです。それを知らされた時、ぼくたちの間には、ほんのささいな弊害がちょんと出てきただけだったのです。一緒にいれば、そんなもの簡単に乗り越えるのは容易だろうと、朝飯前だと思っていました。
しかし今、眼前に迫るにつれその弊害は、茫漠とした壁となり、ぼくとその周囲の脅威となりました。
──────よろしくおねがいします。
担当医との話し合いが終わり、会社に戻ろうとした時に、おとうさんが漠然と告げたその一言に、ぼくは上手く答えることができませんでした。
このままぼくは、お義父さん、お義母さんと呼ぶことになるのでしょうか。判然としない感情を抱えたまま、3年彼女の世話をするのでしょうか。
きっとその3年間は幸せでしょう。なぜならぼくは彼女を愛しています。
ですが、愛とは有限なのです。死して尚、愛は続かないのです。
彼女がいなくなった後、ぼくはいったいどうなるのでしょうか。
曖昧に彼女のご両親に頭を下げて会社に戻った自分の不甲斐なさが恨めしくなりました。
またも有休を使うはめになりました。有休とは、有限な休暇のことです。しかし、有休を使うことには、あまり抵抗がありませんでした。それはどのような心情の結果から生まれたのか、ぼくが説明するに難いことです。
割れ物を扱うかのように彼女の部屋は、隔離された病棟に移され、完全な個室でした。
足音さえ立ててはいけないようなリノリウムの廊下に、スリッパは不向きな方でした。
引き戸式のドアは、患者の配慮のためスムースに動きましたが、ガラガラと鳴るのは耳に響きます。
まず目についたのは、真ん前の窓から見える風景でした。小さな町がこの角度だけなら一望できます。窓脇には幾つか置物がありましたが、そこに彼女とぼくの関連物はなく、おそらく彼女のご両親の置いていった物でした。
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