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「それならお前らだけでやれよ。こっちだってやりたくてやってんじゃねぇよ」
聞こえないように呟いたのが、クラスで僕と同じような立ち位置にいる彼だった。
僕はそれに賛同して、2人で絶対に聞こえないように陰口を叩きまくった。
人の品性なんてこんなもんだ。
彼とは意見が良く合った。
それまでどうして会話の一つもかわさなかったのか後悔するほどに仲良くなったのだ。
眼鏡をかけているのがより貧相に見え、容姿は目も当てられない、無駄にスタイルだけ良かったのが彼の特徴だった。
そう言う僕も彼とトータルスペックがさほど変わらないのが邂逅の原因だったろう。
特にこの2人が、究極的に一致したのが『運動おんち』であった。
こういう場で活躍するのは普段ヤンチャなことを繰り返す奴等だ。
その中には当然彼女もいる。
当然僕と彼は活躍しない。
なぜかって?
できないからだよ。くそやろう。
どうしてこういう奴等は普段部活なんてまともにしないのに、こういう時だけ本気を出すのか不思議でしょうがないし、それだけの潜在能力を持っていることに嫉妬するばかりだ。
だけど、そんなことはどうでもいい。
僕は借り物競争であわてふためくクラスの小さな女の子に釘付けだったからだ。
あぁもう可愛いなぁ、と。
出番をすっかり無くした僕と彼は後ろの方で興味無さげに一つ一つの競技を眺めていた。
たまに言葉を交わす程度に、『暑いな』『いつ終わるんだよ』『帰りたい』。
すると、どうも目を離せない競技名が読み上げられる。
女子の騎馬戦。
一歩間違えればポロリもなきにしもあらず。
男子生徒なら一度は夢見る神様が作りし競技。
しかし、その実態の醜悪さは卑劣を極め、純情な男心を弄ばれる結果となる。
ゆえに、そうなった。
騎馬戦が終わり、テントへと勇ましいクラスの女子が戻ってくるのを何の気なしに見ていると、何人かの他のクラスの男子が、彼女を含めた何人かの女子と話しているのを見かけた。
チャラついた人達の付き合いとは端から見ていると、どうも見苦しくみえてしまうものだ。
しかし、どうでもいいので直ぐ様競技へと視線を変えた。
それから幾日が過ぎた後のこと、彼女が久しぶりに命令を下しなさった。
またまた以前の場所へ連れて行け、ということらしい。
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