寡黙な僕

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あぁ、きっとあのDQNだろう。 僕はまだきっとあのDQNを信じきれていないのだ。 あいつはまだ僕の画像を持っているにちがいない。 それを付き合って間もない彼女に見せて、僕を見せ物にしようとしているにちがいない。 なんて姑息な奴なんだ。 あぁ、言ってやりたい。 “今日いつものとこで話がある” 今なら言える。 たとえこの教室内でも。 ガラララとドアが鳴るよりも大きな声で話し合う、というよりも喚き合うような集団がやって来た。 このクラスの主導権を握るような奴等だ。 そこには当然────あれ?彼女がいない。 その場に彼女はいなかった。 しかし、その場だけでなく、その日一日彼女は学校へは来なかったのである。 次の日も、その次の日も、彼女は一向として来なかった。 風邪にしては重病みたいだな。 しかし、そうではなさそうだった。 何よりも驚いたのが、このクラスで彼女の話題を一つとして聞かなかったことにある。 僕が唯一クラスで口をかわす彼は、最近、「夜になると近所で阿鼻叫喚する輩がいて良く眠れない」としか言わない。 全く日々に面白みのない男だ。 こいつを一年間張り込んでも、情熱大陸で流す映像はきっと一分を切る。 そう確信した。 「そうそうそれで!」 「キャハハハハ!」 本当にうるさい生き物だ。 人間かどうかも疑わしい。 「──んでさ、あいつどうなったの?」 「んー?あいつって?」 「××じゃんか」 「あぁー、あいつね」 意地悪く笑ったのは、体育祭でもリーダーを張ったあいつだ。彼女の親友。 「────デートの日に彼と私が一緒に歩いてるの目撃させたった」 「キャハハハハ!」 何人かが笑い転げる。 「やりすぎじゃね?だって元々付き合ってたんでしょ?彼と」 「うん。でも、なんか最近あいつムカつくんだよね。メールの頻度どんだけ多いっつー話だよ。特に最近は多かった」 最近、彼女は僕の奴隷を解放した。 「だから──────彼氏と一緒にはめたの」 「キャハハハハ!」 彼女はきっとはけ口を無くしたんだ。 「そしたらさ!なんてメール来たと思う?彼氏のこと遊び人だから気をつけた方が良いよ、だって。マジでアホじゃん。気づけよアホ!」 それも含めて僕のせいだ。 「───ほんと、やることが酷いよね」 目の前にいる彼が小さく言った。
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