~もう1つの絶対条件~

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~もう1つの絶対条件~

11月12日、午後17時、件の館。 門扉にも館の扉にも、鍵は掛かってなかった。 件が館を出たのは昨日の話だ…、あえて鍵を掛けなかったという事? いや、今はそんな事を気にしている場合じゃない。 件の言っていた“鍵”、それに対応する“何か”を探さないと…。 辺りにある本を見回し、それらしいタイトルを探す。 失われた家族…、件が家族を失った事件を…、この中から? 無理だ…、こんな膨大な本の中から、たった1冊の本なんて見つかるわけが無い。 件なら分かるかも知れないけど、これは件が私に向けたメッセージだ。 私に分かるように伝えた…、私にも分かる物を指して言った筈なんだ。 尚且つ、それは絶対に私には見付からない場所にあると思う。 でなければ、私が意図せずして見つけてしまう可能性があるから。 …簡単な話じゃないか、私に絶対に見付からない場所…。 今まで、私の推理を件が誰かに報告する時は、必ずその部屋からだった。 私は2階への階段を上り、カウンターの方へ向かう。 そのカウンターの奥に、管理人室の扉があった。 関係者以外立ち入り禁止…、気にも留めてなかった、どこにでもある注意書き。 けど、関係者が件しかいないなら…、立入禁止とだけ表記すればいいはず。 いってみれば、この注意書きは件の館の4番目の“絶対条件”。 件だけの秘密の部屋…、件の館の秘密の宝庫なのかも知れない。 カウンターの中に入り、奥にある管理人室の扉を…、開ける。 …そこには、私の知らない件の館のもう1つの顔があった。 浴室とベッド、冷蔵庫、電子レンジ、テレビ、クローゼット、洗濯機と乾燥機、 そして、社長室にあるようなテーブルと椅子、その上にはパソコン…。 浴室には水の跡こそ無かったものの、湿度が高く、昨日も使用したと思われる。 冷蔵庫にはいくつかのコンビニ弁当のようなものがあり、 洗濯機の中にはシャツや靴下などの洗濯物が少量、残されている。 紛れも無い生活感…、件は…、本当にここで暮らしてたんだ。 私はパソコンの画面を覗き込み…、気になる表記を見つけた。 “榎本友香里へ”…、私の名前だ。 私はマウスを手に取り、私の名前の所をクリックする。 これは…、“Passworod”…?パスワード…!! ここに、件から貰った“鍵”を入力するのか…!? 私は、慣れない手つきでキーボードに手を添える…。 了
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