1人が本棚に入れています
本棚に追加
~鍵の鍵~
“失われた我が愛する家族”…、私はそう入力し、力強くエンターキーを叩く。
…!?エラー!?どうして…?パスワードが違う?
私はもう1度同じ文を入力し、再びエンターを押す…、やっぱりエラー。
パスワードが違うのか…、それともここじゃないのか…。
その後も色々試行錯誤を繰り返すが…、やっぱり先に進まない。
「失われた、我が愛する、家族…。」
そう独り言を呟き、ハッと思いつく…。
失われた…、家族の…、名前?家族の名前を入力するのか?
けど、アメリカ人ということだけでそれは以上は、聞いたこともない。
部屋の中を探し、それらしき物が見付かるかと思ったけど…何も無い。
…いや、もしかすると。
私は携帯電話を取り出し、黒澤に電話を掛ける。
件は私と黒澤に交流があった事を知っている…。
そして、黒澤はどうやってか、件の本名を調べ上げた…。
それは、件も知っている…、それを踏まえた上で…?
「…もしもし。」
「黒澤!?私、友香里!!」
「分かってるよ、携帯なんだから…、それで、何か掴めたのか?」
「そうじゃなくて…、黒澤って件の家族の事…、奥さんと子供の名前、知ってる?」
「あいつの家族…、あぁ、“川元ジュリア”と娘の“サラ”、だったかな?
確か、既に亡くなってた筈だが…、それがどうかしたのか…?」
やっぱり、黒澤は知って…、そして件もその事を見越した上で…。
「ジュリア…、サラ…、綴りは?」
「J,U,L,I,A…、それから、S,A,R,A、だ…、何か掴んだんだな?」
「いや、今のところはまだ…、もう少しで何か掴めそうなの。」
「そうか…、無茶はするな、危なくなったらすぐ、俺か武藤に電話しろ。」
「分かった…、ありがとう。」
私は電話を終え、キーボードに再び手を添える。
パスワード…“ジュリア、サラ”…、エラー。
パスワード…“サラ、ジュリア”…、エラー…。
今度こそ…、パスワード“julia,sara”…、来た!!
これは…、数字の羅列…、もしかして電話番号?
誰の番号かは分からないけど…、出て来たという事は電話しろって事だろう。
私はもう1度携帯を手に取り、その番号に電話を掛ける…。
了
最初のコメントを投稿しよう!