~海~

1/2
前へ
/11ページ
次へ

~海~

同日、22時、件の館付近。 私は物陰から、館を見張っている…。 私に予測が正しければ、黒澤がここを訪れるだろう。 もしくは、件が黒澤に元に行くか…、恐らくどちらかに間違いないだろう。 武藤が私の家に来ていたあの瞬間、黒澤は件の館の近くにいたはず。 “出勤していない黒澤が、張り込みをしていた人間”なんて分かるはずない。 それなのに黒澤はその刑事に連絡し、監視を解かせた。 もう中にいるかも知れないと思い、鉄柵の門扉を押してみたが鍵が掛かっていた。 あの門扉の施錠、開錠には件が持っている鍵が必要だ。 件がわざわざ“黒澤を門扉の前まで出迎える”なんて考えられない…、 鍵が掛かっている以上、件は間違いなく中にいて、黒澤はいないという事だ。 …だとすると、件が黒澤の元を訪れる可能性が高いか? だけど、それなら“件の方から黒澤を呼び出した”事になる。 あれだけ嫌っていた黒澤を呼び出して何の話をするつもりなのか…。 もう、4時間近くここで見張っているが未だに動きが無い。 黒澤が人払いをしたからには、今日中に会うつもりなんだろうけど…、 …!?出て来た…!! あれは・・・、件だ!! 以前見た外出用の服と雰囲気が同じだ…。 車は使わないようだから、そんなに遠くには行かないはず。 件は、私がいるのとは逆の方向に向かって歩き始めた。
/11ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1人が本棚に入れています
本棚に追加