~カワモトコウサク~

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~カワモトコウサク~

「さっき武藤と電話で話した時に聞いたんだがな? 大神崎は犯行を認める訳でも、否定する訳でもなく、 ただひたすら黙秘を貫いているらしい…、意味が分かるか?」 「それって…、犯人を庇ってるって事?」 「恐らくな…、どうだ、何か思い当たる事は無いか? いや、“思いついた事”でもいい…、何かあれば話せ。」 犯人を庇ってる…?もしそれが本当なら、犯人は件と顔見知りの可能性が高い。 件は意外に人間の好き嫌いが激しく、誰かを気に入る事は滅多に無い。 そんな件が殺人の…、正確には殺人未遂だけど、 犯人を庇うなんて、相当深い関係じゃないと考えられない。 「ごめん、私には何も思いつかない…。 せめて、件の事がもう少し分かってれば、何か分かったかも知れないけど。」 私が知っている件の友人といえば、私の父くらいしかいない。 「友香里、俺はあの大神崎が信用出来ない。 だから今回の事も、俺は奴を信用する気は無い…。」 「今回の事って…?犯人は女だって、黒澤が…、」 「奴の黙秘の事だ…、そんな事していては、いずれ正式に逮捕される。 だがその、“犯人として捕まっても構わない”といった態度自体が信用出来ない。 気に入らんが…、奴は頭がいい、何か考えがあると思って間違いないだろう。 しかし、お前でさえ見当が付かないなら、今のままでは手の打ち様がない。」 「私は…、何をすればいいの?」 「話が早くて助かる…、まずは大神崎と話をせん事には始まらんだろう。 武藤に話を通しておく、会って奴の口から何でも良いから聞き出して来い。」 「分かった…、私行ってくる!!」 私は勢いよく立ち上がり、黒澤に背を向けて病室のドアを開けた。 「おい…、友香里!!」 急に呼び止められ、私は後ろを振り向く。 「奴が黙秘を続けるようなら、まずは焚きつけないと話が進まんだろう?」 「…?まぁ、そうだけど…。」 「“川元康作”…、この名で呼んだら態度が変わったのはお前も見たはずだ。 それが奴の本名だ…、川元康作、覚えとけ。」 「かわもと…、こうさく…?分かった…、ありがとう。」 私は再び黒澤に背を向け、病室を飛び出した。 「無茶はするなよ…、友香里。」 了
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