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~痛みを伴い~
同日、15時、警視庁ロビー。
「榎本友香里さん、黒澤警部から連絡を受けてます、こちらへ。」
「はい。」
到着の際に迎えてくれた刑事は、武藤ではなかった。
「あの…、武藤刑事は?」
「つい先程、黒澤刑事の入院されている病院に行きました。
武藤は、あれで黒澤警部を兄のように慕っておりまして。
榎本さんは、もう病院に行かれたんでしたよね?警部の容体は?」
「えっと、意外と大丈夫そうだったと思います。」
「黒澤警部は他の部署にいた時から不死身の男で通ってます、心配無用でしょう。
さぁ榎本さん、着きましたよ、どうぞ中へ。」
名前も知らない刑事に先導され、私は面会室へと入っていく。
中には…、瞳を閉じ、ただひっそりと佇む件の姿があった。
「件…、話を聞きに来たよ?」
声を掛けても、まるで人形のように全く反応が無い。
「今回の事件、黒澤を刺したのは件は犯人じゃないと、黒澤は言ってる。
ねぇ件…、あなたは真犯人を知ってるんじゃないの?」
…私の問いかけにも、微動だにしない、聞いているかさえ怪しい。
「あなたは何故、何も言わないの?
否定でも肯定でもなく、何故黙秘なんて曖昧なことを?
その行為自体に、何かの意味があるということなの?」
私が何を言っても、件の反応は何も変わらない。
なら最終手段だ…、頭の中で件に関する情報をかき集め、構築する。
「ふん…、私にも言えないって訳…?でもまぁ、それでも良いか?
自分の妻も子供も守れなかった男の話なんて、あてにならないだろうし。」
「…黙りなさい。」
「あんたの嫌いな黒澤が、あんたの家族と同じ目にあって嬉しいんでしょ?」
「黙れと、言っている…。」
「あんたの家族がどう死んだのかは知らないけど、可哀想だったのは分かる。
夫が、父が、家族も守れないような軟弱者だったんだからね。」
「貴女に…!!私の何が分かる!!!!」
「分からないよ!!あなたが何も言わないから!!
教えてよ…!!貴方が知ってる全てを…!!
黒澤を刺した犯人を捕まえる為に!!
力を貸して、川元康作!!」
「…!!」
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