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「……んぁ?」
口元に垂れたよだれを拭いながら、リアは上体を起き上がらせ大きく背伸びをする。そして、つい先程まで見ていた記憶を思い返し、小さな声で呟く。
「あれから4年……。あの時、せめてクエルの行き先くらいは聞いておけば良かったな……」
クエル・ウォーカー。15年前、トロアークで捨て子のリアを保護した人物でもあり、リアをまるで我が子のように育て上げ、様々な知識を与えた親代わりの人物でもあった。
そして、クエルがリアの前から姿を消して4年。リアは今現在もクエルに言われた通りこの家で生活を続けていた。だが、クエルは今も一向に帰ってくる気配すら見せず、それどころか消息すらも掴めていない状況だった。
「座標さえ分かれば、今すぐにでも迎えに行ってやれるんだけどな……」
そう言って、リアはベッドから起き上がり目の前の空間に黒い渦のようなものを出現させ、何の躊躇いもなくその中へと歩み進める。すると、景色は一変し場所はキッチンへと移り変わる。
「……いや、それはクエルも同じことか」
自嘲するように溜め息を吐き、リアは後ろにある潜り抜けた黒い渦のようなものを縮小させ、やがて消滅させる。
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