▼  守りたいもの

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「は…ははっ…何、考えてんねん。アホやなぁ、俺。ほんに、最低や。…あー、めんど…止めや止め!……やって、しゃーないやんな、それが俺なんやから…。…寝よ」 廉造は仏壇の遺影に映る矛兄から顔を背けると、そよそよと風が吹き込む縁側に座り、錫杖を見つめる。 所々に刻まれている傷は、きっと今まで父・八百造が座主や坊を守ってきた証なのだろう。 「…柔兄も金兄も自分の錫杖持ってはるのに、俺はお父のお下がりて、……なんやそれ、重たぁ、…責任重大やんか、…もー…」 力ない息を吐きながら、廉造はごろんと体を倒す。 こうして一人になると思う。 自分はなんて、不安定な立場なんだろうと。 坊も子猫丸も、いつかは上に立つ。 そうなればもう、きっと今の様に隣を歩くことは、―――ない。 ならば自分は、いったいなんのために妙陀にいるのだろうか。 いったいなんのために、祓魔師になるのだろうか。 いったい何のために、命をかけて戦わなければならないのだろうか。 「……俺、ここにいる意味、ほんにあるんやろか」 思わず口から漏れた本音に気がつかぬまま、廉造は静かに目を閉じ、ゆらゆら揺れる心を抱えながら、ゆっくり眠りに落ちていく。 このままずっと、眠っていられれば良いのにと、この期に及んで、虚しい願いを抱きながら。 _
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