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「は…ははっ…何、考えてんねん。アホやなぁ、俺。ほんに、最低や。…あー、めんど…止めや止め!……やって、しゃーないやんな、それが俺なんやから…。…寝よ」
廉造は仏壇の遺影に映る矛兄から顔を背けると、そよそよと風が吹き込む縁側に座り、錫杖を見つめる。
所々に刻まれている傷は、きっと今まで父・八百造が座主や坊を守ってきた証なのだろう。
「…柔兄も金兄も自分の錫杖持ってはるのに、俺はお父のお下がりて、……なんやそれ、重たぁ、…責任重大やんか、…もー…」
力ない息を吐きながら、廉造はごろんと体を倒す。
こうして一人になると思う。
自分はなんて、不安定な立場なんだろうと。
坊も子猫丸も、いつかは上に立つ。
そうなればもう、きっと今の様に隣を歩くことは、―――ない。
ならば自分は、いったいなんのために妙陀にいるのだろうか。
いったいなんのために、祓魔師になるのだろうか。
いったい何のために、命をかけて戦わなければならないのだろうか。
「……俺、ここにいる意味、ほんにあるんやろか」
思わず口から漏れた本音に気がつかぬまま、廉造は静かに目を閉じ、ゆらゆら揺れる心を抱えながら、ゆっくり眠りに落ちていく。
このままずっと、眠っていられれば良いのにと、この期に及んで、虚しい願いを抱きながら。
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