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裕也がどこにいるかくらい、眞弓にもわかる。
―――第二理科準備室だ。
裕也は部活をサボるときも、勉強するときもそこにいる。
何度となく、厚かましく掃除に出向いている。
裕也の性格上、常に部屋は汚れている。
そのため、週に一、二度掃除をしないと異臭騒ぎになる。
現に、眞弓が吹奏楽の全国大会で一週間いなかったとき、軽く騒ぎにもなっている。
帰りの迎えに行く、いつもとは違う心持ちで第二理科準備室へ向かう。
なるべく早く。
でも、急いでいるとわかられないように。
走る手前くらいの早歩きで、眞弓は歩く。
―――先輩、受け取ってください。私の気持ちを!
何度となく頭の中でシュミレーションを繰り返す。
入学したときから、正確には推薦受験に来たときからの憧れ。
その憧れを初めて口にする。
気配で察しられていても、わかられていても、関係ない。
―――先輩、付き合ってください。
「裕先輩…………?」
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