裏切り?

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そう聞こえたようで、一気に現実に引き戻された。 しっかりと抱き締めた鞄を、さらにきつく抱き締め、眞弓は走った。 息が切れても、構わずに走った。 階段を駆け上がり、押し戸を思いきり押し開け、誰もいない、朱に染まった屋上に駆け出した。 「うわぁぁぁぁん…」 哀しかった。 信じていた訳じゃないけれど、裏切られた気分だった。 結局、自分の独りよがりだったんだ。 そう思うと、哀しくてたまらなかった。 涙は、後から後から溢れてくる。 その涙を拭おうともせず、朱い空に向かって泣いていた。 「泣き止めよ、眞弓。」
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