~光明~

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~光明~

「そういえば、話の途中で何か引っかかる事があったんだよね…。」 黒澤の話に聞き入ってしまって、肝心の手掛かりを見失ってしまった…。 「…事件の犯人なら、死刑判決を受けて、期日を待ってるが?」 「いや…、犯人の事じゃなくて…、何だっけ?」 「…被害者の話か?」 「そうそう!!エレベーターの中に子供がもう1人いたって話!!」 「クリスマスシーズンだ、子供が百貨店にいても不思議じゃないだろう。」 そうじゃない、子供がいた事じゃなくて…。 「そのエレベーターの中には、他に誰が乗ってた?」 「川元の妻と子供、それからもう1人の子供とその父親の4人だった。」 そうだ…、それなら!!件が庇っても納得出来る!! 「親しくなくても…、同じ境遇の人なら、庇うかな!?」 「同じ境遇…?まさか、川元は…!?」 エレベーターに乗っていた子供と、その父親…!! あの事件で2人の家族を失った人間が、同じ境遇の人間と出会って…!? いや…、例えそうでも件なら止める、同じ傷を誰かに背負わせたいとは思わない。 出会ったのが、まさに犯行の瞬間だったとしたら…!? 件なら、あの“件の館”の情報網を使って、 同じ事件の被害者遺族の顔を知っていても不思議じゃない。 私が件だったらな、家族を失った事件を徹底的に調べるだろう。 その過程で遺族の顔を知ったなら、件は“決して忘れない”。 「同じ境遇を持つ人間の犯行なら、件が庇ってもおかしくはない…!!」 「確かに…、俺を殺したいほど憎む奴といえば、 あの爆破事件の関係者がまず浮かぶだろう。」 「あの事件の被害者の名前…、分からない!?」 「すまん…、俺には伏せられていて知る術が無かった。 あの事件の後、すぐ入院して、監視まで付けられていたんでな…。」 黒澤が責任を感じて、自殺しかねない状況だったのかも知れない。 それを防ぐ為の監視の意味もあっただろう。 「武藤に言えば、すぐ調べてもらえるだろう。 お前は、今すぐ警視庁に行け、武藤には俺から伝えておく。」 「分かった!!それじゃあ、また何か分かったらすぐ連絡する…!!」 私は病室を飛び出し、タクシーを拾って警視庁に向かう。 あの事件の被害者遺族…、疑いたくは無いけど、今はそれに縋るしかない。 了
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