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「え……?」
「これ、兄が人間狩りを始めた理由なんです。」
「それが、原因なの……?」
「……。吸われた人間たちからすると、こんなのはただの濡れ衣でしかない――けど、兄は聞き入れてくれないのです。」
だんだんと、彼女の潤んでいた瞳から、涙が溢れ落ちてくる。
彼女がいくら払っても、涙は止まることを知らない。
しまいには、声をあげて泣き始めてしまった。
「……お見苦しいところを、見せてしまいました。本当に、すいません。」
「いや、別にいいけど……。」
やっと泣き止んだ彼女の第一声はそんな言葉だった。
まさか謝られるとは思っていなかった僕は、咄嗟にぶっきらぼうな返答をしてしまう。
「この病院にそんな大層な罠は仕掛けられてないと思うから、中に入りなよ。そこにいるの、辛いんだろ?」
「それじゃあ、お言葉に甘えて……。」
とは言ったものの、中々足を踏み出してはくれない。
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