イチゴ

6/13
前へ
/24ページ
次へ
口の中が甘ったるい 一袋まるまる食べれば当然か それでも、まだ嫌いになれていないから 家に帰ったら財布にお金を補充して、また買いにでかけよう ――嫌いなれるまで。 頬を伝う涙が、これ以上出なくなるように 空っぽの袋を握り締め、重い足を動かす 下を向けば、落ちる水滴 拭うこともせずに歩く私は、 端からはどう映るんだろうか 家まで、あと数メートル アスファルトにつくシミを数えていた私は 前方を全く見ていなかったから 視界に入った誰かの足を辿り、顔を見た時 自分が造り出した幻かと思った その人は、顔を上げた私を見て驚いている 「……なんで泣いてんの?」 聞こえた声は、耳に馴染んだもの 私が一番心地よいと感じる声 「……何かあったのか?」 心配そうな表情 気づかわし気な声音
/24ページ

最初のコメントを投稿しよう!

331人が本棚に入れています
本棚に追加