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口の中が甘ったるい
一袋まるまる食べれば当然か
それでも、まだ嫌いになれていないから
家に帰ったら財布にお金を補充して、また買いにでかけよう
――嫌いなれるまで。
頬を伝う涙が、これ以上出なくなるように
空っぽの袋を握り締め、重い足を動かす
下を向けば、落ちる水滴
拭うこともせずに歩く私は、
端からはどう映るんだろうか
家まで、あと数メートル
アスファルトにつくシミを数えていた私は
前方を全く見ていなかったから
視界に入った誰かの足を辿り、顔を見た時
自分が造り出した幻かと思った
その人は、顔を上げた私を見て驚いている
「……なんで泣いてんの?」
聞こえた声は、耳に馴染んだもの
私が一番心地よいと感じる声
「……何かあったのか?」
心配そうな表情
気づかわし気な声音
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