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~ダブルタキシード~
11月18日、17時、自宅リビング。
「あ、来た来た、今開けま~す!!」
チャイムの音が聞こえたので、私は雑談を中断し、玄関に件を迎えに行った。
「お邪魔します…、おや?どうしました、その格好?」
「えへへ~、奈々子に貰ったの、どう?似合う?」
「…自分以外の人が着ている姿を見ると、
自分がどんなに恥ずかしい格好をしているか、思い知らされます…。」
タキシードにシルクハット、件と同じ格好をして出迎える。
もっとも、今日の件は外出用のシンプルな服装だったけど…、
「むしろ私は、あんな格好が似合うところに驚きだけどね?」
「…見慣れているせいではないですか?」
「かもね?あ…、あがって?こんな所で話すのも何でしょう?」
私はドアに鍵を掛け、チェーンも掛けて、件の腕を引っ張る。
「…厳重ですね?いつもこんなに?」
「それは秘密!!」
私は件をリビングの隣の部屋まで引っ張り、ソファーに押し付けた。
「あの…、聞いてもいいですか、友香里さん?」
「はい!!何でしょうか、大神崎さん!?」
「私、貴女に話があると言いましたよね…?」
「はい、そうです!!だからこの格好で待ってました!!」
「いや、服装は兎も角…、大事な話だという事は、分かってたはずですよね?」
「いいえ!!私はそんな事一言も聞いてません!!」
「…わざと、ですか?もしかして…。」
「タイミングが重なっただけ、と言いたいところですが…、わざとです!!」
件は目を押さえながら、下を向いて首を横に振っている…、やれやれ?
「こんにちは~、お久しぶりです!!」
「改めて紹介します!!親友の片桐奈々子ちゃんです!!」
「は~い!!かたぎりななこちゃんです!!ヘイ、夜露死苦な!!ベイベ~!!」
同じ格好をした2人に、件は言葉も出ないご様子。
「…どうして、片桐さんが?」
「親友の家に遊びに来たらいけません?」
「いえ…、そういう事ではなくて…、」
「手品しますか?私、色々出来ますよ~?はい!!私の右手に注目!!」
件は頭を抱えて俯いている…、やっぱり苦手なタイプのようだ…。
了
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