序章

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  無垢な子供の頃ってのはよかったもんだ。 世間を知らないから、未来についてあれこれ悩むことなんてなかったからな。 正直今は未来に不安しかない。 それもこれも、俺に魔法が使えると分かった時からだろう。 それまでは、普通の生活を送れていた。 ――15歳の春まで、つまり2ヶ月前までは、俺は田舎の小さな街で鍛冶屋を切り盛りする両親のもとで普通に暮らしていた。 父も母も優しかったし、兄弟はいなかったが、学校の友達もいい奴ばかりだった。 自分で言うのも何だが、田舎の学校とはいえ俺はまあまあ成績もよく、どちらかと言えば優等生だった。 みんな俺を慕ってくれていたし、俺はそんな生活に満足していた。 そして、特に問題もなく初等学校、中等学校を卒業した俺は、そのまま受験して近くの進学校に行くはずだった。 しかし、思いもよらずその予定はある時一瞬にして崩れ去ったのだ。
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