序章

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  俺は母に気まずくて顔を背けたが、怒るか悲しむかしていると思っていた母は、意外と普通にしていた。 と言うよりむしろ母のほうが、気まずいような微妙な表情をしていた。 なぜだ? それも謎だったが、さらに気になったのはこのオッサンが誰かということだ。 どこかで見たような気もするが…… いろいろと分からないことだらけの俺が訝しむような目を向けていると、そのオッサンは、察したような反応をした。 そして、医者と看護士が俺の点滴を取り替えたりして退室するのを見届けたあと、オッサンは俺に話しかけてきた。 「うむ、割と元気そうですな。あぁ、先に自己紹介をするべきでしたな。ゴホン、私はフェッセルで王立魔導学校の教頭をしている、ラジアル=トレーシーと言う者です。あの時馬車に乗っていた―― 此度は君に迷惑をかけてしまって申し訳ない。」 「い、いえ、僕の不注意だったので……」 肩書きに驚いたが、一応返事をしておく。 なるほど、そういえば意識が飛ぶ前に馬車に乗ってるこの人を見たような気もする。 そして謝罪に来たというわけか。 しかしまあオッサンとか言っていい相手じゃなかったな。
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