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「ぐあんよぉ。にいたんぐあんよぉ」
うん、いつ聞いても可愛い声だ。もう朝飯の時間か。
今年の夏で満3歳になる妹の舌足らずの声を目覚ましに、僕はベッドから身体を起こし、天井に向かって大きく腕を伸ばした。
肩甲骨のあたりがゴキリと、小気味良いのかそうでないのかよく分からないような音を立てる。
ベッド脇の小さな窓から家の外門を見下ろすと、中学2年の弟がちょうど郵便受けから新聞を取り出す様子が見えた。
母・和子が起床、そのまま台所に立ち朝食の準備に取りかかり
父・修が寝ぼけ眼ではありながらも、モソモソと布団から這い出して髭を剃り始め
次男・隼人が日課である早朝ランニング及び我が家の愛犬マゾヒストの散歩を終えて、生意気にも朝っぱらからシャワーを浴び
長女・真由衣が一斉に起き出した家族達につられて目を覚まし、台所から漂う香ばしい匂いを嗅ぎながら、二階に繋がる階段の下から幼い声で残りの一人に朝食を知らせ
ユクリ
長男・遅(つまり僕)が、Tシャツにトランクスという非常にラフな服装で頭をボリボリと掻きながら階段を下り、待ち受けていた愛妹を抱き上げて思う存分モフモフする。
こんな風にして、一見ごく普通の家庭に思われそうだが実は本当にごく普通の家庭である吉野家の一日は始まる。
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