親の死

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「おかあちゃん・・・おかあちゃん!!!年取ったって嫌だよ~おかあちゃん戻ってきて!」 棺に覆いかぶさりながら最期のお別れをした娘さんでしたが、次の瞬間やはり魂が抜けたようになってしまわれていました。 私は、この二面性は要注意だなあと思いながら見ていました。 経験上、ご家族の「死」を受け入れることが出来ず、現実逃避をされる方は往々にしてこういった状態になるからです。 待合室へご案内し、挨拶等済ませた後のことでした。 娘さん・・仮名「ゆり」さんとしておきましょう。 ゆりさんが、炉の前に行きましたので私も心配で付いて行きました。 ゆりさん「ねえ・・私なんでここにいるんだっけ?あれ?私なんで喪服着てるの?」 私「・・・・・・・・」 ゆりさん「(遺影写真を見て)あれ?おかあちゃんの写真がある。なんでこんな写真あるの?ねえバウさん私何しにここにきたの?」 これは言葉を選んでしっかり事実をお伝えしないと・・・ 私「今日はゆりさんのお母様の旅立ちを見送りに来たんですよ。」 ゆりさん「おかあちゃんここにいるじゃない・・(自分の横を指差して・・)。」 私「それはきっと、ゆりさんのことが心配で仕方がないのかもしれないですね・・お母様は一昨日、癌のために亡くなって、今ね、火葬されてますよ。」 ゆりさん「そんなわけない!だって、私おかあちゃんのこと看取ってないもん。」
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