第3章

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都心のとある会社。近代的なビルにある。 ここに勤めて五年になる進藤達也は、毎日の業務を今日も順調にこなしていた。 進藤は明るい性格で、お調子者だがかなり大ざっぱだ。 仲間意識が高く、人見知りしないからか、先輩だけでなく後輩にも慕われている。 いわゆる社内のムードメーカー的な存在だ。 自分の島には、話しやすい面倒見がよい係長と、六人の仲間がいる。 毎日仕事は淡々と進むものの、人には恵まれており、職場にいくのは苦痛ではない。 「進藤くん、ちょっと」 上司の片山が向こうから呼んだ。 「あぁ、またうちの資料のことで何か言われるのかなぁ…。ねぇ、係長」 といいながら席をたった。 日々に何度となく同じようなことで呼ばれる。 「はい」 片山がちょっとこいと言わんばかりに、目線を廊下におくる。 うぇ… まさかの呼び出し? そう思いながらも廊下に出た。 「おい、今日時間あるか?」 かなりひそひそと言った。 「え?資料作り直しで残業ってことですか?」 予想通りだと思った。 また片山がこっそり言った。 「いや、そうじゃないんだ。少し君に手伝ってもらいたいことがあるんだ。仕事ではなくて…」 なんだろう。 どうせ、面倒な仕事がまだ残ってるんから、それが回ってきたのかなと思ったが、逆らうわけにもいかない。 本当は久しぶりに今夜は飲み会が入っていたのだが、もちろんそれもドタキャンだ。 「大丈夫です。残りますから。」 そう言って席に戻った。 しかし、いつもと少しばかり違う片山の言い方に違和感が残った。 ただ仕事のことなら、机で話せばよいのに… 気になるな… そう思いながら、残りの仕事をこなしていた。
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