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物見遊山で見物するのは誰にでもあることだ。それを悪癖だなどと言うつもりも無いが、それをわざわざ口にするのは悪癖と言うべきではないかと、哲はやれやれと肩をすくめる。
「あーそういや最近巷で噂になってる『チェンジリング』って知ってる?」
「妖精が子供をさらい代わりを置いていくというあれか?」
「そりゃあ本家のチェンジリングだよ。そんなものがこの現代日本で噂になってるわけ無いじゃないか。僕が言ってるチェンジリングは最近ここいらでちょくちょく起こっているプチ失踪事件のことだよ」
陽の言葉に眉をひそめる哲。
「ああ、そういえば案件に挙がっていたな。他の方が急を要しそうだったからまだ目を通してはいないが」
「聞いた話だとこの密島市周辺で若者が行方不明になるんだって。んでしばらくすると戻ってくるんだけど……」
陽は一旦言葉を切り次に喋る言葉の印象を強める。
「戻ってきたやつは失踪当日から発見されるまでの記憶がほとんどなくておまけに失踪前と違って性格がいくらかおかしくなってるんだってー」
弁当を食べながら喋る陽。対する哲はその言葉に弁当をつつく手を止め陽をみる。
「帰ってきた者の不自然さからそれが妖精の置いた偽物であるとみたてて『チェンジリング』か。良い趣味のネーミングセンスとは言えないな」
「それで僕たちでその噂の真相を確かめないかって話」
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