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物語は唐突に、なんていうけれど、僕らのそれはとうの昔に始まっていたんじゃないだろうか。
生まれてから死ぬまで、一生を綴るだけでも立派な物語だ。たった一日の出来事を綴るのも良い。ほんの数秒を事細かに解説するのも然り。
とはいえ、何をもって始まったとするのか、何をもって物語るのか。『物語』の基準は曖昧だけど、それら全てに言えることは司会者が要ること。世界を視界に収め、表すための視界者――主人公が。
ただの脇役でも視点を変えれば主人公だ。誰でも主人公たりえる。僕だってこうして語る以上、主人公に成り得る。だけどそれは世間一般に望まれる主人公像だろうか?
答えは否。
この十七年、僕は僕を演じてきた。他人を俯瞰して観察して、自分のことだけを考え綴った安全策の台本に従って。
ゲームのチュートリアル、劇の予行さながらに、その通り演じれば僕には何の支障も無い。だってそのシナリオは、僕が好きなように都合の良いように、他人の行ったテンプレばかりを寄せ集めたものだから。
ゆえにそれは、客観的に見るに耐えないシナリオ。山場も無ければオチも無い、読めば数ページで投げ出すような、何の面白みもないストーリーだと僕自身自覚している。
自覚した上で、僕は僕を演じ続けていた。
客観的にどう映ろうと、僕の主観では心地良かったから。
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