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タマジロウはポストいっぱいのクリスタルを引き出してため息をつく。
「姉さんは本気で職人めざしてるのかなぁ。」
姉の口癖を思い出す。
『いつか使うんだから取っといてねー(^3^)/』
肩をすくめいつものようにサック、サッチェル、金庫にとクリスタルや素材を振り分けてしまい込む。
「ご主人様、防具も届いてるクポ~。」
モグがいそいそとタマジロウに手渡す。
「高額装備クポ!カッコいいクポ~。」
「それはつまり高レベル装備で僕には不要の物なんだけどね。お金が無いって喚いてるのに預けるって…売ればいいのにさ。」
手の中の"ホーバージョン(胴装備)"に目を落とす。
冒険者では戦士ジョブ等に人気の需要装備品。それ故に競売ではそこそこの値段になる。
とは言っても上には上がある。更に上へ上へと装備レベルも値段も昇っていく訳だから次の段階へと進んだら手放してお金にし次の装備の購入費用に回すべきである。
需要商品ならなおのこと。
「まったく同じ戦士ジョブへの当て付けか。」
不機嫌にもなる。
憧れはもっと高みにあるが平均値にも及ばない自分のレベルではこの道程にある装備品にも羨望の眼差しを向けざるを得ない。
「ご、ご主人様、手紙もあったクポ~。」
モグはオロオロと二つ折りの紙切れを差し出す。手紙と言うよりはメモである。
モグにあたる訳にはいくまいと丁寧に受け取り手紙を開く。
『やっぱエルヴァーンは鎧が一番似合う!!特に男はな!!早く晴れ姿が見たいよーo(^∇^o)(o^∇^)oハヤクーハヤクー🎵超期待っ(@゚▽゚@)!!』
鎧好きの姉らしい。
鎧を着たエルヴァーンなどサンドリアにはいくらでも居るし、冒険者仲間にも居るだろうに。
ただそれだけに焦りや急かし、プレッシャーも感じられず呆れと何やら嬉しいような気持ちで口元がほころぶ。
ふと、ホーバージョンを着た自分を想像したタマジロウは自分自身に肩をすくめた。
手紙をホーバージョンに挟みこみ家具にしまう。
今、欲しがってる人が居るかもと思うと悪い気もした。
が、
「直ぐに必要になる。」
不適な笑みを作ってみせた。
道具袋の空きと装備、自身のレベルとスキルをチェックして今日の目的地を算段する。
「素材狩りに行って来る。」
調子に乗り過ぎたな、と心で笑った。
冒険はこれからだ。
タマジロウは外へと扉に手をかけた。
そして、
「ご主人様、行ってらっしゃいクポー🎵」
モグのいつもの台詞が背中を押すのであった。
画像:次男・玉次郎
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