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「あ、あの、藤原さん?」
ビルの隙間に向かって怒鳴ったり、驚いたりしながら会話をしている光流にゆき乃は声を掛けた。
その声が耳に入らないのか、意図的に無視をしているのか、光流は隙間の闇に向かって話し続ける。
「伊藤安次郎さん、後で話聞きますから吉原神社まで一緒に来てくれますか?俺たち、急いでるんです」
「…私は、此処から離れられへんのんです…」
「…地縛霊か」
つぶやくと光流は姿勢を正して御幣を構え、大祓詞を唱え始めた。
「高天原に神留まり坐す 皇が親神漏岐神漏美の命以て八百万神等を神集へに集へ給ひ・・・」
光流の詞は吉原の街に響き渡る。
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