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『ひょえー!』
トーマスが情けない声を出しながらライフルを撃つ。建物の陰から銃口が見えた。慌てて身を隠す。弾丸が壁を削った。
ゾエはそろそろ敵の後方から奇襲するはずなのだが、未だにその気配はない。
『急げよ……』
トーマスも再び撃つ。今度は、敵が物陰に隠れる。
ライフルがカカカカッと音を出す。
『弾切れっ!!』
慌てて身を隠す。敵の弾丸が横を通り抜けるが、気にせずに弾倉を取り替える。その時、センサーに友軍反応が出た。一だ。
『よし……』
トーマスは空になった弾倉を持つ。
『これでもくらいやがれ!』
一瞬だけ姿を表し、弾倉を投げた。敵の集中がそっちに行く。敵は弾倉を撃った。穴があいたそれはカラカラと音を立てて地面を滑った。
『空弾倉だと!? なめや――うわっ!!』
爆音と共に、敵が吹き飛ぶ。
『ナイスだ、ゾエ』
『まぁね、こんなもん朝飯前よ』
『言うなぁ……』
二人は合流する。
『ここは、これで終わりかな?』
『多分ね』
『よし、敵から奪える武器は奪うぞ』
『えぇ』
ゾエは賛同し、二人は敵の武器を物色し始めた。手榴弾や所持している武器に規格の合う弾薬などを入手し、その場を後にした。そろそろ一カ所目の敵集結地点だ。二人は歩いた。
できれば赤外線で敵の位置情報を調べたかったが、こうも火事が広範囲だと思うようにいかない。金属反応も無数にある。つまり、視界と音のみが頼りだ。
『二ブロック先を左。そこが敵集結地点よ』
『了解した』
トーマスは武器を構え直す。足音を忍ばせて進む。
『どう攻める?』
『やっぱり、奇襲でしょうね』
『なぁ、あの建物はなんだ?』
トーマスは先に見える、周囲より少し高い建物を指差した。
『教会ね。そこまで傷はなさそうだけど……どうしたの?』
『あれ、使えないか?』
*
トーマスは落ちていた割れた鏡をそっと出す。角を曲がって少し歩いた場所にフランス兵が見える。
『今のところ警戒しているのは二人。多分反対側にもいるな。他は休んでいるか……』
『なるほどね。ざっと何人?』
『ざっと十五人はいるな』
『なら、そこまで問題はなさそうね』
『そっちは?』
『二階に着いたわ。バズーカの準備もできてる』
『了解した。それじゃあ、始めますか』
『オーケーよ』
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