2317A.D.

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トーマスは建物の陰から飛び出すと、相手がライフルを構える前にバズーカを撃つ。敵の持っていた武器だ。砲弾は敵の足下に落ちた。 * 『しまった!』 『うわあぁ!!』 フランス兵はバランスを崩し、倒れる。隣の兵士は右膝を押さえて叫んでいた。彼の右膝から下が吹き飛んでいた。血がボタボタと溢れ出している。 『くっそ!』 フランス兵は倒れた格好のまま敵の居るであろう場所に銃口を向ける。が、粉塵が視界を遮る。 『構わん、撃て!』 隊長の合図と共に、複数の銃口が火をふく。次第に視界が晴れる。 射撃が止まる。敵は居なかった。 『隠れたかっ!』 フランス兵は立ち上がる。叫んでいた仲間は動かない。ただ、血が流れ続けていた。 『全方位索敵、怠るな!』 『了解』 フランス兵はライフルを構えつつ周囲を見回す。バシュッ! と音がした。その方向を見る。 『……へ?』 眼前に金属の塊が見えた。フランス兵がそれは何かを理解する前に、砲弾の爆発により頭が吹き飛び、絶命した。 * 『二発命中! 敵さんの集中はこっちだ!』 『了解』 ゾエは割れた窓から上半身を出す。その手にはトーマスが使っていたバズーカだ。 『こいつでっ!』 『甘いよね、坊や達は』 背後からの声に思わず振り向いた。聞こえたのは通信機を介さない、正真正銘、女の肉声だった。 『いつの間に……っ!?』 ゾエは冷や汗をかいているのがわかった。自分に銃口を向けている何者かは、言う。 『そのバズーカを捨てなさい。そして、両手を上げて』 タイミング悪く、トーマスの声が聞こえてきた。 『なにがあった!? ゾエ!!』 『背後に回られた……』 小声で言う。 『はやくしなさい。あなたが私に銃口を向けるよりも、私がこれを撃つ方が早いんだから』 敵が苛立った声で言う。ゾエはおとなしくバズーカを捨てて両手を上げた。 『いい子ね』 階段を駆け上がる音が聞こえる。 『そっちのパワードスーツも止まりなさい。この子がどうなってもいいなら別だけど』 『くっ……!』 足音が止まる。 『話がわかるじゃない』 敵はクスリと笑う。その時、敵の背後からパキッと音がした。 『ッ! 分からず屋のようね!』 いつの間にか取り出していたライフルを背後に撃つ。レンガでできた古い壁にいくつもの穴ができる。 『今投降すれば、死ぬことも、怪我をすることも無い。おとなしく投降しなさいっ!』
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