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敵は肩を震わせている。トーマスはその場を動かない。
『はやくしなさい!』
弾倉が床に落ちた音が響く。
『まだ、抵抗する気!?』
敵はゾエにも気を配りつつ動く。
『悪いが、俺は敵よりも怖いもんがあるんでね。その交渉に応じることはできない』
『なんですって!?』
トーマスの肉声を聞いた敵の怒りが伝わってくる。その時、入口で待機していたフランス兵が教会内に雪崩れ込む。
『マジかよ』
トーマスは呟く。
『こりゃ、腹をくくるしかないか』
室内にトーマスが入ってきた。すぐにフランス兵を見つけ、銃口を向ける。フランス兵もトーマスに銃口を向けていた。
『今の貴方は絶対的に不利よ。武器を捨てなさい』
『それはどうかな? 俺たちは、二人だけじゃないんだぜ?』
『なにっ!?』
『合流が思ったより早くて助かった』
下層から銃撃音が聞こえた。しかし、一つ、また一つと音が減る。そして、音は消えた。
『α、応答せよ! α!!』
トーマスは銃口を向けたまま歩み寄る。
『形勢逆転だ』
フランス兵は目の前の敵というより、十人以上いた仲間を殲滅した、見えない敵に恐怖した。トーマスの歩みに合わせて一歩ずつ下がる。
『そんなはずはない……。この私がやられることなど……』
背中に固い感覚。
『私のこと、忘れてない?』
バズーカが火をふいた。フランス兵は金属片を撒き散らしながら前方に吹き飛び、トーマスは慌てて避けた。グシャア!! とした音と共に倒れ、血が古い床を染めていった。
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