秘密

10/24

64人が本棚に入れています
本棚に追加
/110ページ
そんな私を見てか、蓮はいきなり、私に話をふってきた。 「そういえば、美嘉、悠太先輩にフラれたんだって?」 蓮が面白がって言った。 私は窓から目を離し、蓮を睨んだ。 「…だから何」 「美嘉がフラれたのって初めてじゃねぇの。笑える」 蓮が腹を抱えて笑い出した。 ―…腹立つ。 私は、この男が苦手だった。 蓮とは、高校に入って知り合った。 千紗の彼氏、ということで、時折話すようになったのだが、 時が立つにつれ、蓮から絡んでくるようになった。 「…なんで笑うのよ」 私は唇を噛んだ。 「だってさぁ、意地っ張りの美嘉ちゃんがフラれたって…。 あー、見たかった」 蓮は笑い過ぎて、涙目になっている。 「最低」 私は、教室に向かって歩み去った。 「あー…。美嘉、怒っちゃった」 千紗は、美嘉を追おうとして、小走りで走り出した。 そして、ひとまず恋人に手を振ろうと蓮を振り返ると、 千紗は目を見開いた。 大好きな彼は、片手で顔を押さえていた。 そして、こう呟いた。 「…なぁ千紗。俺、ちゃんと話せていたか?」 その手の下から、赤面した彼の顔がのぞいていた。 「ちゃんと話せてたよ。大丈夫」 千紗は苦笑いした。 千紗はずっと、不毛な想いに終止符をうてないでいた。
/110ページ

最初のコメントを投稿しよう!

64人が本棚に入れています
本棚に追加