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そして、放課後になった。
私と千紗は、放課後の部活の為に、
校舎裏の部室へと向かって並んで歩いていた。
何故か、ふたりの間に一度も会話がなかった。
私は今出来るだけ、千紗と話したくなかったが、
いつも会話を切り出す千紗が話し掛けてこなかったのは、少し不自然だった。
部室に入ると、そこには蓮と、
…悠太先輩の姿があった。
「こんにちは!」
明るく挨拶する千紗と対照的に、私は、
「…こんにちは」
と、軽く会釈した。
悠太先輩はそれに、微笑んで会釈し返してくれた。
―…やっぱり、好き。
私が好きになった笑顔。
私は、この人なつこい笑顔が好きだった。
…今は、私のものではない。
出来る限り、側にいたつもりだった。
でも…、
千紗に先輩の気持ちを奪われた。
どうして先輩は千紗を好きになったのだろう。
…いや。
あんな取り柄のない子を、先輩が好きになるはずがない。
きっと、千紗が誘惑したのだ。
そうにちがいない。
まるで言い訳するように、私は自分に言い聞かせた。
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