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グラウンドから少し離れたベンチに座り、グラウンドを見つめる私に、
蓮が横から声を掛けた。
「美嘉ちゃーん。
マネージャーの仕事、千紗に任せっぱなしでいーのかなぁー?」
蓮がおもむろに顔を除きこんでくる。
私は顔を逸らす。
そのはずみで、グラウンドの隅で千紗がボールを磨く姿を見つける。
その姿に、近寄る人がいた。
「あ…」
私は、小さく声をあげる。
―…悠太先輩だ。
悠太先輩は、一生懸命ボールを磨く千紗に「頑張れ」と、声を掛けていた。
そして、柔らかく微笑んだ。
胸が痛くなって、息苦しくなる。
私の胸の中に、感じてはいけない『黒い感情』が広がった。
そんな私を見て、蓮は呟いた。
「そんな顔も、出来るんだな」
私は一体、どんな顔をしていたのだろう。
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