秘密

12/24

64人が本棚に入れています
本棚に追加
/110ページ
グラウンドから少し離れたベンチに座り、グラウンドを見つめる私に、 蓮が横から声を掛けた。 「美嘉ちゃーん。 マネージャーの仕事、千紗に任せっぱなしでいーのかなぁー?」 蓮がおもむろに顔を除きこんでくる。 私は顔を逸らす。 そのはずみで、グラウンドの隅で千紗がボールを磨く姿を見つける。 その姿に、近寄る人がいた。 「あ…」 私は、小さく声をあげる。 ―…悠太先輩だ。 悠太先輩は、一生懸命ボールを磨く千紗に「頑張れ」と、声を掛けていた。 そして、柔らかく微笑んだ。 胸が痛くなって、息苦しくなる。 私の胸の中に、感じてはいけない『黒い感情』が広がった。 そんな私を見て、蓮は呟いた。 「そんな顔も、出来るんだな」 私は一体、どんな顔をしていたのだろう。
/110ページ

最初のコメントを投稿しよう!

64人が本棚に入れています
本棚に追加