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―…どうして作り笑いなんかしてるの…?
私の頭の中を、悠太先輩のいつもの爽やかな笑顔がよぎる。
千紗が悠太先輩に作り笑いをさせた。
その事実が私の胸を締め付けた。
―…悠太先輩が、可哀想じゃない。
私は目を細める。
すると、隣から蓮が、私の顔を見つめた。
「なぁ…」
いきなり蓮に話し掛けかけらて、
私は思わず蓮の顔を見た。
「…何」
「まだ、悠太先輩のこと好きか?」
唐突な質問に、私は目を逸らした。
「…別に。私をふった男なんかしらない」
私がそう言うと、
蓮はグラウンドに向き直って、
「…あっそ」
と呟いた。
空が茜色に染まる頃、やっと部活が終わった。
「…帰ろ」
私はベンチを立ち、
鞄を取りに、そそくさと校舎裏の部室へと向かった。
私は校舎の隅に倉庫のように在る部室に着き、
ドアノブに手をかける。
すると、中から3年生の大きな会話の声が聞こえた。
「―…美人といえば、うちのマネージャーの美嘉ちゃんだろ!」
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