秘密

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「違う…?何が?」 「お前は…、どうして作り笑いばかりするんだ? もっと、…笑えよ。あの時みたいに…」 私は蓮の頬に平手打ちをした。 スパンッ 周りに大きな音が響く。 「何にも知らないくせに…。 分かったようなこと言わないでッ!!」 部室から、先輩達が顔を覗かせる。 歩行者も振り返った。 私はそんなこと構わずに、 蓮を一睨みしてから部室に押し入り、鞄を取る。 呆然と立つ蓮を残して校門を出た。 バスに揺られながら、さっきの蓮の台詞を考えていた。 『どうして作り笑いばかりするんだ?』 ―…確かにそう。 だって私は…、 親の愛を受けてこなかったから…。 ‡‡‡‡‡‡‡‡ 私の両親は、私が4歳の時に離婚した。 私の顔は、お母さんに似たらしい。 お母さんは綺麗で上品な人で、元モデルだったと聞く。 ―…でも。 お母さんは、不倫をしていたのだ。 相手はお母さんが通う、料理教室の先生だった。 そしてそれが、警視であるお父さんにバレて、 離婚した。 その後は知らない。 でも、きっとお母さんはその人と、今も幸せに暮らしているのだろう…。 私はお母さんを憎まなかった。 元々、お父さんは浮気性だったから。 幸せなら、それでいいと思った。
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