秘密

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次の日、私が校門前のバス停に降りると、そこには蓮がいた。 「…はよ」 蓮が照れくさそうに、頭を掻きながら言った。 「………おはよ」 私は消え入りそうな小さな声で呟いた。 ふと、蓮の顔を見ると、 頬がこころもち腫れている気がした。 私が蓮の前を通り過ぎていくと、 蓮は後ろから駆け寄り、隣で歩き出した。 私は横を見る。 「…何」 「あっちに千紗いるじゃん。 一緒に行かなくていーのか?」 蓮は、後ろの方に見える千紗を指差した。 私はそれを一瞥して、また歩き出した。 「…私達が、仲良いように見える?」 私がそう言うと、蓮は空を見上げた。 「…あー…、まぁ。良い風には見えなくもない。 どちらかといえば、千紗の一方通行」 「…でしょう?てゆーか、アンタこんな所いていいの? 彼女、いるくせに…」 すると、蓮は千紗を一瞥して、 私に向き直った。 「彼女より、美嘉の方が…」 蓮がそう言った途端、 後ろから笑い声が聞こえてきた。 「ちょっとぉ、もう付き合っちゃったのぉ!?早ぁい!!」 一瞬、自分達が言われたと思い、思わず振り返ると、 そこには3年生の先輩女子が、わいわいとコイバナに花を咲かせていたところだった。 私は、なんだ、と思い蓮に向き直った。 「…それで、さっき何て?」 「なっ、何でもねぇよ!!」 蓮は、バツが悪そうに早足で歩き出した。
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