真実

3/5

64人が本棚に入れています
本棚に追加
/110ページ
「それがどうした」 「私は5位だったのに。 アンタ、それでも解けないの?」 女は、にやりと笑った。 カチンときた。 「…やってやろうじゃねぇか」 机の上に置かれた俺の拳が、怒りに震える。 「でも、宿題の問題集ごと忘れたんでしょ? 当てられても、出来ないわ」 「……」 俺が黙りこむと、女は頬杖をつき、ため息をつく。 そして、 女は、自分の問題集を、俺の机に放り投げた。 「…貸してあげる。ただし、私は問題解いてないけど」 パラパラと宿題のページを開くと、 確かにそこの問題には何一つ手がつけられてなかった。 「…何なんだよ、お前。 嫌味言ったり、嘲笑ったり」 俺は、ため息をはいた。 「…ただ、私の上を行く人間がどれほどのものか、見ておきたかっただけ。 …あと、お礼の一つも言いなさいよ」 女が、ふっと柔らかく微笑んだ。
/110ページ

最初のコメントを投稿しよう!

64人が本棚に入れています
本棚に追加