真実

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「何?話って」 クラスメイトの岡田 千紗に、校舎裏へと呼び出されたのだ。 千紗は背中で腕を組んで、俺の顔を見上げた。 「…私と、付き合ってくれないかな」 俺は千紗の言葉に目を丸くする。 「は?」 「実は私、蓮くんのことが好きなの」 真っ直ぐな千紗の想いに、答えられなかった。 「…ごめん」 「…好きな子がいるんだよね?」 「…あぁ」 「美嘉でしょう?」 「……あぁ」 「…じゃあ、諦めるしかないね」 どうして頷いたのか、自分でも分からない。 でも、 何故かそう認めた瞬間、俺の中で何かが軽くなったことは事実だ。 正直言って、あの女…美嘉とは、いい思い出がない。 初めて話した時は、嘲笑われただけだった。 お前から絡んできたくせに。 おまけに、俺を見ようとしない。 こちらから話し掛けても知らんぷり。 だから、 美嘉をこちらに向かせるためには、 …千紗が必要不可欠だ。 千紗と付き合えば、美嘉とも簡単に話せるかもしれない。 美嘉の友達の彼氏… これ程話しやすいきっかけはない。 ごめんな、千紗。 純粋なお前を、利用させてもらうことになるけれど。 もしかしたら、犠牲になってもらうかもしれない。 …ごめんな、千紗。 でも、どうしても、 意地っ張りで、生意気なアイツが欲しいんだ。 ……ごめんな、千紗。 「いいよ、付き合っても」
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