64人が本棚に入れています
本棚に追加
/110ページ
「美嘉は帰って。後は俺に任せて」
いつもより優しい蓮の口調が、少し恐ろしかった。
私は蓮に促されるまま、校門を出された。
出される直前に私は、
「何かあったら、私のせいにして。蓮は悪くない」
そう言って、蓮の前を去った。
校門前のバス停に着くと、ちょうどバスが発車してしまった時だった。
そのバスの背中を見送りながら、私はバス停前のベンチに座る。
最終便だったというのに。
もう次は訪れないというのに。
私はただ、待っても来ないバスを待ち続けていた。
ふと、空を見上げる。
「…空が紅い…」
さっきまではあんなに輝いていた、
見たこともないくらい綺麗な、
茜色の夕日だったのに。
今は、私を咎めるような紅い夕日。
「わたしはわるくない……」
私は、バス停のベンチに、いつまでも座り続けた。
そんな私を、
冬の暗い夕方の中で、
ぽつんと立つ、
たった一つの街灯だけが照らしてくれていた。
私がその明るい街灯に気付かなくても、それでもそこに立っているのだろう。
私の周りが明るい理由は、その街灯だけが教えてくれた。
最初のコメントを投稿しよう!