64人が本棚に入れています
本棚に追加
/110ページ
一日の授業が終わったことを知らせるチャイムが、学校中に鳴り響く。
私は鞄を腕に掛けて、“ある人”の机の前に立った。
「一緒に帰らない?」
私はにっこりと微笑む。
私の目の前で椅子に座る蓮は、私の顔を見た。
私を見つめる蓮の瞳が、まるで射抜くようで、
私は蓮の瞳から目を逸らせなかった。
蓮の瞳に映る私の顔が、怯えていた。
私達は二人並んで校門を出た。
二人の間に会話は無く、
奇妙な場だ。
沈黙を破ったのは、私だった。
「ねぇ、…千紗はどうなった?」
私は隣にいる蓮を見上げた。
蓮は黙って私を見つめた。
「……それって、あの後、千紗をどうした?って聞いてんの?行方を聞いてんの?
…それとも、死んでたの?って聞いてんの?」
「…全部」
「…千紗はある場所に隠した。あと、死んでた」
「…蓮は平気なのね。大切な人が死んでも」
「その台詞、そのままそっくりお前に返してやるよ」
その言葉を聞いて、私は前に向き直った。
「千紗なんか、大切でもなかった。
…悠太先輩の想いを…踏みにじった」
私が呟くと、蓮は眉をひそめた。
「…まだ…好きか?悠太先輩のこと…」
最初のコメントを投稿しよう!