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「マフラーだけじゃ、寒い。
…今だけ、だからね…」
私が呟くと、頭上で蓮が微笑んだようだった。
まるで、なりたての恋人のような二人だ。
千紗は今、この二人を見て、何を思うのだろうか。
「…あ…」
私は灰色に覆われた空を見上げた。
灰色の空の隙間から、淡く冷たい白い花弁が舞い降りる。
私は、舞い降りたひとひらの白い花弁を手のひらで包みこんだ。
大切に、大切に…。
「綺麗ね…」
私はふと、呟いた。
純粋な、白。
何色にも染まることなく、汚れた私の所にも舞い降りる。
まるで、千紗みたい…。
……千紗は天国で、何を思うのでしょうか。
この雪は、千紗の思いなのでしょうか。
ならば、
千紗は私に何を望んでる?
憎いって思ってる?
死んで欲しいって思ってる?
…当然の報いだと思う。
死んで、当然だと思う。
私は、貴女を殺めたのだから。
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