悪戯

7/7

64人が本棚に入れています
本棚に追加
/110ページ
海水が冷たくて、足が震え出す。 …いや、怖かったのかもしれない。 でも、この時の私は、本気で死にたいと思っていた。 舞い降りた雪を見て、自分がとても悪い人間に感じた。 雪はあんなにも白いのに、私は…―――。 …とにかく、消えたかった。 今生きる、全ての状況から、逃げたかった。 解放されたかった。 海水が腹の辺りまで浸かる。 ―…冷たい…。 真冬の海に、体温が奪われる。 今にも意識が遠のきそうだ。 水中の抵抗をうけ、体が思うように前に進まない。 それでも私は前に進んだ。 雪は更に降りだし、辺りを白く染める。 ―…あぁ、私、雪に包まれて死んでいくの。 白くて、綺麗。 こんな死に方が出来るなんて、私は幸せ者ね。 最後の最後まで、私はそんなことを考えていた。
/110ページ

最初のコメントを投稿しよう!

64人が本棚に入れています
本棚に追加