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海水が冷たくて、足が震え出す。
…いや、怖かったのかもしれない。
でも、この時の私は、本気で死にたいと思っていた。
舞い降りた雪を見て、自分がとても悪い人間に感じた。
雪はあんなにも白いのに、私は…―――。
…とにかく、消えたかった。
今生きる、全ての状況から、逃げたかった。
解放されたかった。
海水が腹の辺りまで浸かる。
―…冷たい…。
真冬の海に、体温が奪われる。
今にも意識が遠のきそうだ。
水中の抵抗をうけ、体が思うように前に進まない。
それでも私は前に進んだ。
雪は更に降りだし、辺りを白く染める。
―…あぁ、私、雪に包まれて死んでいくの。
白くて、綺麗。
こんな死に方が出来るなんて、私は幸せ者ね。
最後の最後まで、私はそんなことを考えていた。
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