疑惑

5/11

64人が本棚に入れています
本棚に追加
/110ページ
二人は、礼儀を守って家に入り、会釈をしてソファーに腰かけた。 「紹介が遅れました。私は佐乃宮といいます。以後、お見知りおきを」 50過ぎの男が軽く会釈する。 「杉山です」 杉山という男も、続けて会釈した。 私達二人は、その向かい側のソファーに腰かけ、“嘘も混じえて”全てを話した。 「…なるほど。その時、岡田千紗さんと二人で教材を運んでいた、と。目を離した隙に、千紗さんがいなくなっていた、ということですね」 杉山は、私達の話を何一つ聞き漏らすことなくメモにとっていた。 「はい」 「はい」 私と蓮は二人同時に返事をした。 「ご協力、ありがとうございました。では、このあたりで」 そう言って、警察二人は席を立って帰っていった。 「あの相沢美嘉という子、可愛かったですね」 マンションのエレベーターの中で、杉山が言った。 エレベーターが急降下する。 「杉山、お前今までそんなこと考えていたのか?」
/110ページ

最初のコメントを投稿しよう!

64人が本棚に入れています
本棚に追加