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「あの“怪物”のか?」
佐乃宮は、目を細めた。
―…“怪物”相沢仁 警視総監。
警視庁を支配する怪物。
「俺は、けっこう会ったことがあるが、あの人はどうも苦手だ」
佐乃宮は、眉間にしわを寄せた。
「いつも不機嫌そうですもんね」
杉山が口を手で押さえながら、堪えるように笑った。
「いや、それより、あの人が放つ不気味なオーラだ。あの人に睨まれると、生きている感じがしない」
佐乃宮は、杉山をひと睨みして黙らせた後、早足で歩き出した。
長めのコートの襟元に顎を埋める。
吐く息が白い。
佐乃宮はいきなり、ピタリと足を止めた。
「いやまてよ、相沢警視総監の孫ということは、“相沢弘行”の娘ということか…」
いきなり止まった佐乃宮の背中に、杉山がぶつかりそうになる。
「おっとと…。
相沢さんというと、警視の方ですよね」
「あぁ。アイツは俺の部下だったんだが、相沢警視総監という親のコネで、俺より上の位までいった。
途中、アイツは俺が見とれる程、綺麗な嫁さん貰ったらしいが、逃げられたと聞く。
嫁さんの名を…確か梨華、といったか。
その梨華さんの顔が…相沢美嘉と瓜二つだ」
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