疑惑

11/11
前へ
/110ページ
次へ
「伊集院さんのせいで、相沢美嘉が辛い思いをしたことは事実です。 本当は、僕が代わりに謝りたいです」 杉山は、半泣きになった。 「…馬鹿か、お前は…」 佐乃宮は、そんな杉山の頭をぐしゃぐしゃに撫でた。 私は乾燥機から制服を出し、蓮の腕に無理矢理乗せた。 「帰って」 「何で?」 蓮が眉をひそめた。 「制服乾いたから」 「さっきの続きはしねぇの?」 「ウザい」 私は蓮を睨んだ。 「ウザいって、お前なぁ…。 いいよ、美嘉が抱かせてくれるまで、待ってるからさ」 そう言って、蓮は頭を掻いた。 「一生待ってろ、カス」 私は蓮に向かって、舌を出した。 すると、蓮は吹き出し、大爆笑した。 「なんなの?」 私は眉をひそめる。 蓮は手で口を押さえながら言った。 「美嘉が…あっかんべーした…あはははは」 「ホントなんなの?ムカつくんだけど」 「違うって。美嘉がそんな風に怒るのって、初めてだよな…。いつも、冷めたような言い方だったからさ…」 「は?」 「よく喋るようになったよな。俺のおかげ?」 「蓮は口数減らせば」 そう言いながら、私は笑った。 私の周りを蝕む氷は、蓮によって溶け始めていた。
/110ページ

最初のコメントを投稿しよう!

64人が本棚に入れています
本棚に追加