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とある街中。
「…よりによって…どうして…“あの子”なのよッ…!!」
長い黒髪の、高い位置でポニーテールをした女は、
隣にいた長身の男の頬を平手打ちした。
通りすがる沢山の人が、二人を振り返る。
男は、女を睨んだ。
「あの人を悪く言うな。
例え、結衣でも許さねぇ」
結衣と呼ばれた女は、大きな瞳に涙を滲ませて、
眉をひそめた。
「あの高校に進学したのが間違いだったんだわ。
そうすれば“あの子”に会わずに、中学の時のまま、比呂と恋人としてやっていけたのに…」
結衣は俯き、両手を目に当て嗚咽を繰り返した。
比呂と呼ばれた男には、それをどうすることも出来ない。
「結衣…悪かった。
今まで付き合ってくれて、ありがとな」
比呂のそんな言葉は、結衣にますます未練を残すだけだった。
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